男性型脱毛症
髪質や濃さの年齢、個人による違い
頭髪の毛は約10万本あり、日本人では、髪を切らなければ、1mを超える長さになります。毛の太さは、小児では細い毛が多く、思春期から太くなり、青年以後、歳をとるに従って、細く短い毛の割合が多くなります。ですから、40、50、60歳となれば、それなりに 20歳のときと比べて髪が減ったようにみえるのは自然なことです。ただし、同じ年齢でも、個人差や人種差があります。これらの差は遺伝によるもので、健康な人では、食べ物の影響などはありません。
毛を伸ばしている毛根は、頭皮の皮下脂肪の深さにまで達しています。毛根の深部の毛母細胞が細胞分裂して毛の細胞が生まれます。それらの細胞が、皮膚表面の毛穴から出てくるまでに、硬く丈夫な毛に変化します。頭の毛ではその状態が数年間続くことで長い毛が伸びるのですが、この時期を毛の成長期といいます。毛の伸びる速度は、1日約0.4mmです。
毛の生え変わり
頭の一本一本の毛は、数年間、伸びると寿命になり、抜け落ちます。この抜け落ちるとき、皮膚の中では、毛母が消失して毛根は浅くなり、毛は抜けやすい状態になっています。この時期を休止期といいます。しかし、数週すると、浅くなった毛根の下に新しい毛母の芽が出て、成長期の毛根が再生して、再び新しい毛が作られて同じ毛穴から伸びてきます。このようにして毛が生え変わることを毛周期といいます。
脱毛症
「脱毛」というのはとても曖昧な意味の言葉です。つまり、たいていは「毛が抜けて毛の数が少なくなる状態」(毛の脱落)といえるのですが、そうでない状態も「脱毛」と呼んでいます。その代表は「男性型脱毛症」で、この場合、毛の数は減らないのですが、あるときから太く長い毛が再生せずに、大半の毛が細く短い毛(軟毛)に置き換わる(軟毛化)ためです。抜けてはいないのですが、頭髪の量は減るので「脱毛症」の中に入れられています。高齢で頭髪が薄くなる壮年性脱毛症も同じ状態です。
また、別の例としては、とてもまれなことですが、毛は十分に作られるのですが、毛の質が弱く、とても切れやすいために、長くならないこともあります。いろいろな毛髪奇形の病気でみられる状態です。毛が抜けて少なくなる「脱毛症」としては、円形脱毛症やトリコチロマニア(抜毛癖)が代表的で、その他にいろいろなものがあります。どれも原因は違いますので、当然、脱毛状態に対する治療や対応も異なります。
男性型脱毛症の軟毛化
男性型脱毛症では、主に男性で、早いと20歳代前半から頭髪が薄くなります。とくに頭頂〜前頭の毛が軟毛になります。いわゆる若禿の状態です。このとき、皮膚の中では、成長期の毛根が確かにあるのですが、以前のように大きな毛根ではなく、小さな毛根になってしまっています。それ以後は、毛周期を繰り返しても小さな毛根のままです。
この毛根のミニチュア化現象は、思春期に体の中に増えるアンドロゲン(男性ホルモン)の作用によるものです。アンドロゲンが作用すると、頭の毛は薄くなり(軟毛化)、ひげ、胸毛、陰毛などは濃くなる(硬毛化)という逆の現象が起きます。どちらも、毛根の毛乳頭細胞が持つII型5α-リダクターゼが関係する作用ですが、同じ毛でありながら逆の現象が何故起こるのかは、未だ解明されていません。ただし、誰でも若禿になるのではなく、遺伝的な素質が大きく左右します。また、女性でも、軽い男性型脱毛症になることがあります。
男性型脱毛症の治療
男性型脱毛症は「病気」というよりは、生理的なもの、つまり人体の自然現象ですので、皮膚科では治療の対象とはなりません。しかし、美容の分野では様々な研究が進み、いわゆる育毛剤が数多く開発され、市販されています。最近のものはある程度の効果が期待できるようになっていますが、数年間も毛が伸び続けるほどの効果があるものは、今のところありません。比較的効果の良い外用育毛剤は、毛乳頭細胞を刺激して毛母細胞の増殖を促す成長因子を出させる作用があることが分かっています。また、内服育毛剤として、II型5α-リダクターゼの作用を抑えて、毛根のミニチュア化を防ぐ作用のあるものが開発中です。
植毛も一手段ですが、側頭部などの自分の毛を毛根ごと移植するのは有効です。自分の組織ですので問題なく生着して、元の部分の毛の性質を保ったまま、生え変わりもします。しかし、ナイロンなどの人工毛を頭皮に植え付けるようなことは厳禁です。異物反応を多かれ少なかれ起こして、化膿したり脱落しますし、安全とはいえません。残っているやや太い毛に人工毛を巻きつけて、みかけ上、多くみせる方法もありますが、その毛が毛周期で脱落すれば人工毛も脱落しますので、お金をかけたわりには長持ちしません。かつらも一手段です。
様々な脱毛症
多くは脱毛の原因がはっきりしています。膠原病、代謝病、消化器病などの全身病、薬剤や毒物の作用、あるいは頭皮の細菌・真菌などの感染症、湿疹・皮膚炎や腫瘍でも脱毛することがあります。これらのときは、その原因となる病気の治療が優先し、多くはその病気が良くなれば毛も回復します。ただし、熱傷や外傷後など、皮膚の瘢痕化による脱毛は回復しません。その他、生まれつき毛が少ない状態もいろいろありますが、このときは乏毛症または無毛症といい、脱毛症とは区別しています。これらはほとんど治療方法がありませんが、小範囲に脱毛している場合は形成手術の適応になることもあります。いずれにしても、脱毛状態の正しい診断が重要ですので、皮膚科専門医に診てもらうことが大切です。
頭髪の毛は約10万本あり、日本人では、髪を切らなければ、1mを超える長さになります。毛の太さは、小児では細い毛が多く、思春期から太くなり、青年以後、歳をとるに従って、細く短い毛の割合が多くなります。ですから、40、50、60歳となれば、それなりに 20歳のときと比べて髪が減ったようにみえるのは自然なことです。ただし、同じ年齢でも、個人差や人種差があります。これらの差は遺伝によるもので、健康な人では、食べ物の影響などはありません。
毛を伸ばしている毛根は、頭皮の皮下脂肪の深さにまで達しています。毛根の深部の毛母細胞が細胞分裂して毛の細胞が生まれます。それらの細胞が、皮膚表面の毛穴から出てくるまでに、硬く丈夫な毛に変化します。頭の毛ではその状態が数年間続くことで長い毛が伸びるのですが、この時期を毛の成長期といいます。毛の伸びる速度は、1日約0.4mmです。
毛の生え変わり
頭の一本一本の毛は、数年間、伸びると寿命になり、抜け落ちます。この抜け落ちるとき、皮膚の中では、毛母が消失して毛根は浅くなり、毛は抜けやすい状態になっています。この時期を休止期といいます。しかし、数週すると、浅くなった毛根の下に新しい毛母の芽が出て、成長期の毛根が再生して、再び新しい毛が作られて同じ毛穴から伸びてきます。このようにして毛が生え変わることを毛周期といいます。
脱毛症
「脱毛」というのはとても曖昧な意味の言葉です。つまり、たいていは「毛が抜けて毛の数が少なくなる状態」(毛の脱落)といえるのですが、そうでない状態も「脱毛」と呼んでいます。その代表は「男性型脱毛症」で、この場合、毛の数は減らないのですが、あるときから太く長い毛が再生せずに、大半の毛が細く短い毛(軟毛)に置き換わる(軟毛化)ためです。抜けてはいないのですが、頭髪の量は減るので「脱毛症」の中に入れられています。高齢で頭髪が薄くなる壮年性脱毛症も同じ状態です。
また、別の例としては、とてもまれなことですが、毛は十分に作られるのですが、毛の質が弱く、とても切れやすいために、長くならないこともあります。いろいろな毛髪奇形の病気でみられる状態です。毛が抜けて少なくなる「脱毛症」としては、円形脱毛症やトリコチロマニア(抜毛癖)が代表的で、その他にいろいろなものがあります。どれも原因は違いますので、当然、脱毛状態に対する治療や対応も異なります。
男性型脱毛症の軟毛化
男性型脱毛症では、主に男性で、早いと20歳代前半から頭髪が薄くなります。とくに頭頂〜前頭の毛が軟毛になります。いわゆる若禿の状態です。このとき、皮膚の中では、成長期の毛根が確かにあるのですが、以前のように大きな毛根ではなく、小さな毛根になってしまっています。それ以後は、毛周期を繰り返しても小さな毛根のままです。
この毛根のミニチュア化現象は、思春期に体の中に増えるアンドロゲン(男性ホルモン)の作用によるものです。アンドロゲンが作用すると、頭の毛は薄くなり(軟毛化)、ひげ、胸毛、陰毛などは濃くなる(硬毛化)という逆の現象が起きます。どちらも、毛根の毛乳頭細胞が持つII型5α-リダクターゼが関係する作用ですが、同じ毛でありながら逆の現象が何故起こるのかは、未だ解明されていません。ただし、誰でも若禿になるのではなく、遺伝的な素質が大きく左右します。また、女性でも、軽い男性型脱毛症になることがあります。
男性型脱毛症の治療
男性型脱毛症は「病気」というよりは、生理的なもの、つまり人体の自然現象ですので、皮膚科では治療の対象とはなりません。しかし、美容の分野では様々な研究が進み、いわゆる育毛剤が数多く開発され、市販されています。最近のものはある程度の効果が期待できるようになっていますが、数年間も毛が伸び続けるほどの効果があるものは、今のところありません。比較的効果の良い外用育毛剤は、毛乳頭細胞を刺激して毛母細胞の増殖を促す成長因子を出させる作用があることが分かっています。また、内服育毛剤として、II型5α-リダクターゼの作用を抑えて、毛根のミニチュア化を防ぐ作用のあるものが開発中です。
植毛も一手段ですが、側頭部などの自分の毛を毛根ごと移植するのは有効です。自分の組織ですので問題なく生着して、元の部分の毛の性質を保ったまま、生え変わりもします。しかし、ナイロンなどの人工毛を頭皮に植え付けるようなことは厳禁です。異物反応を多かれ少なかれ起こして、化膿したり脱落しますし、安全とはいえません。残っているやや太い毛に人工毛を巻きつけて、みかけ上、多くみせる方法もありますが、その毛が毛周期で脱落すれば人工毛も脱落しますので、お金をかけたわりには長持ちしません。かつらも一手段です。
様々な脱毛症
多くは脱毛の原因がはっきりしています。膠原病、代謝病、消化器病などの全身病、薬剤や毒物の作用、あるいは頭皮の細菌・真菌などの感染症、湿疹・皮膚炎や腫瘍でも脱毛することがあります。これらのときは、その原因となる病気の治療が優先し、多くはその病気が良くなれば毛も回復します。ただし、熱傷や外傷後など、皮膚の瘢痕化による脱毛は回復しません。その他、生まれつき毛が少ない状態もいろいろありますが、このときは乏毛症または無毛症といい、脱毛症とは区別しています。これらはほとんど治療方法がありませんが、小範囲に脱毛している場合は形成手術の適応になることもあります。いずれにしても、脱毛状態の正しい診断が重要ですので、皮膚科専門医に診てもらうことが大切です。
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